「使った後の責任」まで
考えられた家具
~オフィス空間のサーキュラー
エコノミーを体現化~
MAKO NITTA
EIZI TOMA
新田 真子
サンフロンティア不動産株式会社
建設部(※写真右から2番目)
東間 英司
サンフロンティア不動産株式会社
リプランニング事業部3課 課長(※写真左)
「サーキュラーエコノミー」を
体現する家具
「サーキュラーエコノミー」を
体現する家具
サンフロンティア不動産株式会社は、基幹事業として主にオフィスの改修を行うリプランニング(不動産再生)事業を展開しています。都心にある稼働率の低い収益不動産やリニューアルを要する建物を取得し、「お客様視点」での付加価値の創出に取り組むことで、社会から求められる高収益の不動産に再生し、高付加価値に再生された不動産を社会へお返しすることで、地域社会、オーナー様、テナント様の笑顔を生み出すことに努めています。
今回、東京都港区に位置する「Net2三田ビル」のリニューアルに際し、サーキュラーエコノミー(循環経済)というコンセプトを掲げました。具体的には、原状回復工事の際に廃棄をいかに少なくするかを考えました。例えばクロスの場合、剥がしてしまうと全てゴミになりますし、接着剤などが混合しているので環境に良くありません。そこで、塗装を上塗りできるクロスを採用しました。通常より紙は硬めですが、剥がさずに上から塗れるためクロスの廃棄が出ません。建材についても、資源として循環できるよう、真物をあまり加工せずにできるだけそのままのサイズで使用するようにしました。さらに、これはワンフロアだけの取り組みですが、脱着可能なタイルを使用し、タイルの廃棄が出ないように工夫しています。
ビル内に設置する家具についても、サーキュラーエコノミーの観点から、分解可能なデザインのものを設置したいと考えました。当初は自分たちで作ろうと思っていたのですが、内装をお願いした会社からCARBON STOCK FURNITUREを紹介していただきました。「都市を森林の貯蔵庫に還す」というコンセプトは、サーキュラーエコノミーを掲げる「Net2三田ビル」との親和性も高いと考え、導入を検討することにしました。
「エレベーターホールに
降りた瞬間に木の香りを
届けたい」
「エレベーターホールに
降りた瞬間に木の香りを
届けたい」
採用前にCARBON STOCK FURNITUREのショールームにお伺いさせていただきました。多摩産材を使用していると伺い、生産地がわかると消費者としては安心できます。国産材は外国産材よりも高価ですが、地産地消という観点から日本の林業に貢献したいと思いました。また、都市が排出するCO2を吸収した地域材を家具として利用することで、産地である多摩の森林と、都心の「Net2三田ビル」との結びつきを強めることができます。そして、森林資源の循環利用を高めることにもつながります。
決め手となったのは、やはり分解可能なデザインという点が大きいです。木の薄皮を剥いだだけの木材をシンプルに組み合わせたものなので、分解することでまた別の家具に生まれ変わるかもしれないし、家具以外の建材になるかもしれない。アップサイクルの幅の広さに可能性を感じました。
また、「オフィスを五感で楽しむ」というコンセプトもあり、「家のように落ち着くオフィスをつくりたい」「エレベーターホールに降りた瞬間に木の香りを届けたい」と考えていました。実際、ショールームで木の香りを味わうことができ、森林浴をしているような気分になれることを体感しました。
最終的に、7階建ての「Net2三田ビル」の2階から6階まで、各階のラウンジにCARBON STOCK FURNITUREのデスクを2台ずつ設置させていただきました。また、エントランスにはベンチも採用させていただきました。エレベーターホールから木の香りがしますし、お客様もそれに気づかれるため、採用して良かったなと思っています。
「使った後の責任」まで
考えられた家具
「使った後の責任」まで
考えられた家具
「Net2三田ビル」のリニューアルに際し、サーキュラーエコノミーについて考えるべく、廃棄物処理場にも見学に行きました。そこでお聞きしたのは、「捨てる責任」という言葉。「人は良いものに対して高いお金を払うが、良い処理の方法を採用している廃棄物処理場や解体業者には高いお金を払わない」という言葉は私の心に刺さりました。
それまで、発注する側として「解体費は安いに越したことはない」との考えを持っていましたが、「捨てる責任」を考えると、多少コストを要してもアップサイクルできるかどうかという視点は常に持ち合わせなければなりません。CARBON STOCK FURNITUREはまさにその考えにぴったりのもので、使用した後に分解できて他の家具などに生まれ変わるため、「使った後の責任」まで考えられたものでした。製品を作る過程でCO2発生の抑制を謳う企業は多いですが、製品を使った後のことを考えている企業は少ないものです。
国産材の使用に関しては、日本は森林が多いためどんどん使った方が良いと考えています。価格面では外国産材に劣るものの、国産ならではの良さや品質にもっと目を向け、国産材を積極的に活用することが大切なのだと気づかされました。
大手建設会社が木造の超高層ビルを作る計画を発表されましたが、木材は建築業界のトレンドになっていくと考えます。森林の多い日本の良さをアピールできるチャンスでもあると思います。間伐もせず放置されている森林は災害も発生しやすいため、国産材を積極的に活用し、森林の間伐や伐採を適切に行っていくことが重要です。当社としましても、国産材の活用にできるだけ注力していきたいと思っています。