国立公園の可能性を広げて
自然へ還るプロジェクト
SATOSHI
NITAKAI
似田貝 諭
阿寒摩周国立公園管理事務所 国立公園保護管理企画官
自然への入り口
体験を通して
見直す地球の未来
自然への入り口
体験を通して
見直す地球の未来
川湯のビジターセンター(旧:川湯エコミュージアムセンター)は、阿寒摩周国立公園(注1)の川湯、摩周、屈斜路エリアを観光に来られた方へ、国立公園の成り立ちや自然環境、キャンプ情報などを展示する施設です。1999年に誕生し、川湯の自然や歴史・文化の玄関口として皆さんに愛されてきました。
この度、施設の老朽化を理由に、新たな役割を求めて「川湯ビジターセンター」としてリニューアルすることになりました。
きっかけは政府が進めている「国立公園満喫プロジェクト(注2)」です。
日本に訪れる外国の方々に川湯の自然をより深く知り楽しんでいただけるよう、訪れた方をお迎えするツアーデスクを設置しました。観光案内や、自然を満喫できるアクティビティの提案を積極的に行っております。また、それらの準備を行えるレクチャールームを増設しています。
今までも、近隣の小中学生が訪れたり、隣町から文化学習ツアーで来館したり、地元の方々にも親しまれていた施設でした。しかし、団体で来られた方に落ち着いて国立公園や自然の話をするスペースはありませんでした。
今回増設されるレクチャールームは、観光へ来られた方の拠点となるだけでなく、国立公園の管理に協力して頂いているパークボランティアの方にも利用出来る設備を整えました。自然環境を守る新たな取り組みを行うスペースとして、進化していけたら良いなと思っています。
リニューアル工事を行うにあたって、東京ガスコミュニケーションズさんからご提案頂いたのが「CARBON STOCK
FURNITURE」でした。
川湯のビジターセンターは環境省が建設した施設です。だからこそ環境省が目指すスタイル、つまり「日本が目指すビジターセンターのスタイル」を具現化する施設でなければなりません。
ここでの自然環境について考える体験を通して、自然との共存について見直す機会をもってもらいたいと思っています。だからこそ斬新でメッセージ性の強いCARBON STOCK FURNITUREは、川湯のビジターセンターとの相性が良いと感じました。
(注1)阿寒摩周国立公園
https://www.env.go.jp/park/akan/
(注2)国立公園満喫プロジェクト
https://www.env.go.jp/nature/mankitsu-project/
国立公園が目指すものを
明確にしたファニチャー
国立公園が目指すものを
明確にしたファニチャー
紹介を受けた時、直感的に「良い」と感じました。
木が浮いて見えるようなデザインはもちろん、「大気中のCO2を吸収して固定した木材を多く利用することで、森林資源の循環利用を高める」というコンセプトは、「カーボンストックの考え方」を明確に表現しています。
CARBON STOCK FURNITUREを目で見て手で触れることで「カーボンストックの考え方」に直接向き合うことが出来ます。そして、木々をはじめとする自然や地球環境について想いをめぐらすきっかけの1つになるでしょう。
道東は山のふもとに近い場所に植林地が広がっているため、伐採のコストが比較的掛かりにくく、全国的に見てもしっかりと手入れがされている印象です。木の雰囲気を通じて道東の森林や林業に関心を持って頂く意味でも、地元の木材を活かしたCARBON STOCK FURNITUREを人目につく場所で使うことに意義があると感じています。
今回導入したカウンターは、事務所とロビーを隔てるように設置しました。直線のみで構成されたCARBON STOCK FURNITUREを斜めに重ねて乗せることで、不思議なフォルムのカウンターに仕上がりました。
こうして空間や用途、要望に合わせてカスタマイズ出来ることも魅力の1つですね。
カウンターは無垢の木材の上に透明なガラスの天板を乗せて作られているので、作業をしていると、自然と木の温かみが感じられます。爽やかなカラマツの香りと相まって仕事の疲れを癒す効果もあるのではないでしょうか。
川湯ビジターセンターのすぐ側には川湯温泉があります。硫黄山と呼ばれる火山から湧き出る強酸性の温泉は、鉄の釘も10日程度で溶かしてしまうほど強いもので、車や電化製品の寿命は短くなってしまいます。また冬になると長い間雪が降り続け、外は一面の冬景色になります。
そういった厳しい川湯の環境に合わせて、外のベンチには腐食に強い金属を使用し、長い雪に耐えられる加工を施すなど、素材にも独自のカスタマイズをご提案していただきました。
木質化を新たな視点で
社会を変えるデザイン
木質化を新たな視点で
社会を変えるデザイン
環境省のビジターセンターとして、細かいところまで環境に配慮しています。
例えば、トイレのエアタオルを廃止してハンドタオルを持ってきていただく、カフェで提供するカップはプラスチックではなく紙製のバタフライカップ(プラスチックの蓋・ストローが要らない紙製のカップ)を使用するなど、小さなこだわりを大切にしました。
その中でもCARBON STOCK FURNITUREは、川湯ビジターセンターの想いを伝える力強いツールとなるでしょう。
政府は方針として、木造建築や外壁への使用を推奨するなど、木材利用の促進を進めています。その中でも、CARBON STOCK FURNITUREは新しい木材利用の可能性を示していると感じています。
今まで、スチールやプラスチックが中心だったオフィス家具に木材を取り入れることで、社会全体の価値観が変わるきっかけになることを期待しています。