木は製材されても生きていると感じる材。
触って感じること、それを楽しめるほうが暮らしは豊かになる。
KOICHI
HAMANAKA
浜中 康一
有限会社 浜中材木店 専務取締役
木を知り、木を活かす。
良い木、良い木材をご提供するために杣人(そまうど)の技を継承。
長く培われた技と目で、育った木を木材に変える。
環境にやさしいものづくりを心がけ、再生可能な資源である木材の有効活用に取り組む。
木材は生きていると
感じるから楽しい
木材は生きていると
感じるから楽しい
製材所の仕事は代々の家業で物心ついた時から側に工場があり、自然と手伝いをしながら、このまま継いでいくと思っていました。仕事を初めた頃は、「よし、これで飯を食っていくぞ!」という思いが強かったのを覚えていますが、いまは自然の木に触れる仕事のありがたみを感じることがよくあります。
木は製材されても生きていると感じる材です。調湿をするし、動きもある。その木自体の特徴がでてきます。それを感じることが本当に木を理解し楽しむことの第一歩です。中でも無垢の木材はその良さを直に感じることができます。施工精度として動かないことを良しとしてきた時代から、様々な場所で生きていると感じる木があることを良しとする時代へ。自然の木を感じる楽しさに最近注目をしています。
また、地場の木を扱うことの意味にも着目しています。生まれ育った地場の木を挽くことは、地場の木を使って生活をしてきた私にとってはあたりまえの感覚です。地場材や国産材を使うことで、日本の木の循環はうまれます。そこから日本の山や森林、海などの資源がつながるように循環することで、健全な暮らしが育まれると思いますので、わざわざ遠くから運んできた木材を使ってまで自国の木材の回転を止める必要はないと考えます。
永く、多くの人の手間を紡ぐ製材の仕事。
それは木と会話をすること
永く、多くの人の手間を紡ぐ製材の仕事。
それは木と会話をすること
当社では建築材を扱うことが多いですが、いまは公共物件の壁・床板・枠材なども扱っています。二昔前までは、この地域でも柱だけ、梁だけ、内装材だけなど、それぞれの得意分野のみで製材している工場がたくさんありました。昔は製品市場という場所もあり、そこに出荷すれば製品を売ることができました。しかし時代とともに製材所の数も減り、工務店やエンドユーザーなどに直接販売するようになると様々な製品を自社で扱わなければ生き残っていけなくなりいまがあります。
木を扱う人たちは誰もが思うことで、木を扱う仕事は決して自分だけで成り立つ世界ではないということがあります。例えば、原木市場にでてくる60年生の木は、60年前に植えた人がいて、それを育てるために枝打ちや草刈りをする人がいて、製材するまでにものすごく沢山の人が関わっています。そういう人たちがいるおかげでいま製品として出荷できる現状が間違いなくあり、その思いがあるからこそいい加減な仕事はできません。ぜひ製材された木材を使っていただく人にもその気持ちを感じながら木材を見ていただけるとうれしく思います。
製材の仕事には、なかなか若い人が集まってきません。最近は山側の植樹・育林・伐採・搬出などに興味を持つ若者は少しずつ増えていますが、原木市場や製材所などは、重そうとかきつそうとかのイメージが先にきてしまうようです。
最初は仕事を覚えることで目一杯ですが、次第に木との会話がはじまると、その過程から面白みを感じられるようになります。昔の人が手がけた枝打ちの仕方や手入れ方法など、まずどれだけ手間がかかっているか丸太を見るところから感覚的にわかってきます。さらに製材をする過程になると木の経歴が見えるようになり、その後どうやって木を挽くとおとなしく製品になるか木とにらめっこしながら製材していくようになります。製材の面白さはそこにあり、それを若い人たちに伝えていくことがこれからの課題です。
木風ではなく、本物の木を感じてもらいたい。最近は食品などもオーガニック素材を使うとか、素材自体に目を向けるようになりつつあると思いますが、木材もまったく同じだと思います。
本物の木に触れて感じる、
カーボンストックファニチャーへの期待
本物の木に触れて感じる、
カーボンストックファニチャーへの期待
様々な空間に生きていると感じる木が置かれることは、製材所にとってもメリットを感じます。カーボンストックファニチャーの扱いが伸びることで循環型にも近づくと思いますし、単純に新しい取り組みとして扱いが増えることは嬉しく思います。
またイベントやワークショップなどで子供たちと一緒に組み立てることは、本物の木材に触れて感じることができる機会なので木育の一環としてもぜひ実現してもらいたいです。いまはテクノロジー化で生活がどんどん便利になっていますが、自然と人の関係がそれだけに偏りすぎるのはやはりよくない。自然と隣り合わせで仕事をしているからこそ、そう感じます。自然から学ぶことはいっぱいあるし、触って感じるだけでもいい。それを楽しめるほうが暮らしは豊かになると思います。
カーボンストックファニチャーを通じて、若い人、建築や設計に携わる人、子供たちに、ぜひ製材所に来てもらいたいです。原木市場から最終の製品ができるところまでを製材所は担っています。その過程の中で、木の形が大きく変わっていく変化を楽しむことができると思います。
カーボンストックファニチャーで、本物の木に触れて感じる。木材一つとっても様々な個性がある。それをぜひ広く伝えてもらいたいと思います。