「食」と「木」身近な存在からひも解く、環境に配慮した未来への期待。
NAOKO
KOBAYASHI
小林 直子
東京ガス株式会社 サスティナビリティ推進部(*2021年9月現在)
「食」と「木」の共通点、
環境問題を考える身近な存在
「食」と「木」の共通点、
環境問題を考える身近な存在
私は以前に東京ガスの食育活動に携わっていました。1992年から行っている当社の「食育」の2つの柱は「五感の育成」と「環境に配慮した食の自立」です。
「食」は、「五感」をフル活用して、目で愉しみ、口にしたときの音、舌触り、香り、味覚までいただいた命を味わってほしい。「木」も、味覚への刺激はないですけれど、目で、香りで、手触りでと、私たちの感覚をいい意味で刺激してくれますよね。私たちの感覚を研ぎ澄ませてくれる存在、という意味で、この2つは似ていると思います。
他方、「環境」の観点。「食」や「木」も、私たちにとって身近な存在であるがゆえに、それを通して「環境」を「自分のコト」としてとらえる、きっかけを与えてくれるところが似ていると感じています。
「食育」では、健康を保つことや美味しく調理できる技術だけではなく、地球温暖化やフードロスなどの環境問題と密接な関係にあることをお話ししていました。その中でも、日常私たちが直接関われる「買い物→調理→食事→片付け」のプロセスの中で、今日から環境に配慮できる方法をお伝えするのが大事なポイントです。なぜなら、私たち一人ひとりは微力だけれど無力ではなくて、「食」を通して環境に優しい生活を個々に取り入れることで、確実に良き方向に変えていけると確信しているからです。
一例をあげると、食材を買う際にどんな商品を選ぶのか? 例えば 「旬の食材」は美味しくて栄養価が高いだけでなく、育てるときにかかるエネルギーも少なくて済みます。それを具体的な数値でお見せしてお伝えすると、大人も子どもも「なるほど、こんなに違うんだね!」と驚きの声をあげられます。
背景にある大きな課題・考え方と具体的に取り組めることをお伝えし、その定量的な効果が見えると「自分のコト」として捉えてくださる、そんな実感を持つことができました。
CARBON STOCK FURNITUREは、CO2固定の総量の印字がされているので、店舗やオフィスにこの家具があると、思わず「これって何ですか?」と私なら聞きたくなります。すると、森林はそこにあるだけで環境に良いということだけではなくて、丁寧に管理し適切に木は使うことでCO2を固定してくれることを知るきっかけになりますよね。エネルギーのように使わないこと(=省エネ)を良しとする社会の中では、「木を使うことが是となる」というのは少し分かりにくいのですが、見える化してくれているので、ここに炭素が入っているんだなぁと理解を助けてくれると思います。
地産地消であることが、
「木」にストーリーを生み、
関心が芽生える
地産地消であることが、
「木」にストーリーを生み、
関心が芽生える
CARBON STOCK FURNITUREが素敵だなと感じるのが「地産地消」であるところです。「食」と同じですが、運搬時のCO2排出量も考慮し、国産木材・地域木材にこだわっていらっしゃいます。それは、CO2を貯蔵する商品であることに加え、製造過程でたくさんのCO2を出さないようにしようという考えですね。
でも私が素敵だと思う理由はもう一つあるのです。「地産地消」の食材を用いたときに生まれる数値化できない効果として、私は「地元への関心が芽生える」ことだと思っています。「地元でとれた食材を給食で出すと、食への興味を持つだけでなくて、地元への興味も増すんです」と、ある小学校の校長先生から伺ったことがあります。
「木」も同じではないでしょうか?
このテーブルは「東京産の木を使っているんだよ!」と聞くと、大都市のイメージの東京にも森林があることを想像するでしょうし、その森はどんな場所なのか・・・と、好奇心や想像力を掻き立ててくれるでしょう。さらに「東京産なんだぁ」と、愛着すら感じることもあるかもしれません。
それは必ずしも東京だけではないでしょう。先日、東京都が運営する国産木材の魅力発信拠点「MOCTION」を見学した際、47都道府県のピースが各県産材で作られた地図が飾られていました。樹種の違いも見られますし、自分の出身都道府県の木は何かなと興味深く見入ったことが印象に残っています。「国産木材・地域木材」を使うことで「木」が持っているストーリーを生み、それに触れた人の関心や愛着を育んでくれる、そんな力をCARBON STOCK
FURNITUREに感じます。きっと店舗やオフィスでもそのストーリーは、料理でいえばスパイスになる、そんな存在になってくれる可能性を感じますね。
環境にも人にもやさしい、
「未来の日常」へ
環境にも人にもやさしい、
「未来の日常」へ
「今のままだと地球がもたない。」ずっと以前から言われてきた言葉にも感じますが、世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書を見ると2011年以降は環境リスク、特に異常気象や気候変動が上位を占める傾向にあり、これまでになく世界的に脱炭素が着目されています。日本の国土の約7割を占める森林は、国土の保全や水源の涵養などの役割を果たすと同時に、大気中の二酸化炭素を吸収・固定し、温室効果ガスの吸収源として地球温暖化の防止に貢献しています。
しかしながら、暮らし方の変化(薪を使わなくなる、建築材の多様化)や、外国産材の輸入が進む中、国内の林業は衰退の危機にあると聞きます。
CARBON STOCK FURNITUREは、ささやかな家具だけれど、私たちに世界的な課題や日本の森林を取り巻く課題とその解決の糸口を気付かせてくれる、存在感のある空間と時間を与えてくれることでしょう。そして、気がつけば木材を暮らしの中で使っているのがあたり前になっている、環境にも私たちにもうれしい、「未来の日常」を創っていきたいですね。